第52話 三福田の教え
農夫が春、田圃に種子を蒔き、秋に収穫を得るように、徳を積んでその果報を受けることが人間にとって真の幸福である。
それにはどういう田圃に種子蒔きをすればよいか。
それが三福田の教えである。
第一は敬田(きょうでん)といって、仏法僧の三宝を敬うことである。
「世間虚仮。唯仏是真」(聖徳太子)
という。
現象世界は仮り物で、ただ仏の世界のみが真実であるというのである。
この唯一真実なる仏を敬い、その教え(法)と、それを伝え導いてくれる僧に、己れを空しうして絶対随順するとき、私どもは小我から大我に生まれ変わるのである。
何一つ頼りにならない虚仮の日常生活において唯一真実なるものを身につけるほど人間として尊く幸せなことはない。
第二は恩田。
ご恩報謝の徳を積むことである。
私どもにとって父母祖先の恩ほど大きいものはない。
切り花はどんなに美しくとも根がないのですぐ枯れる。私どもの生命の花を長く保つには根に施肥しなくてはならない。それは孝順心、真実をもって親に仕えること。亡き祖先に対しては追善のまことを捧げることである。
第三は悲田。
いつくしみの心をもって恵まれない周囲の人々施しをすること。
さらには無縁の精霊に対しても供養のこころを忘れないことである。
阪神大震災以来、ボランティア活動に国民の眼が開けてきたことは、悲田への志向のあらわれであり、一時的現象に終わらせてはならない。