長谷川正徳のちょっといい話
第26話 山川草木悉皆成仏
ある修行僧が草も木も成仏するという話を聞いて、どうしても理解できず、尊敬する学僧に、自分で考えたり修行したりすることのない草や木がどうして成仏するのでしょうかと尋ねた。 そのとき、学僧は、あなたは草木成仏のことを尋ね […]
第27話 身体と心は分けられない ─感謝の心は健康のもと─
「健全なる精神は、健全なる身体に宿る」 これはローマの詩人ユベナリスの言葉を翻訳したものであることは誰もが知るところであるが、詩人ユベナリスの本来の意味は、実は、 「我は欲す、健康なる精神を健康なる身体に」 という […]
第28話 人間は本来、仏である
子供がいたずらをして困るとよくいう。実は子供にはいたずらはないのである。端的にいって、子供の心は仏さまなのである。 ある父親が語った。ある時、よちよち歩きの子供が、いわゆるいたずらを始めた。やさしい父親がはじめて恐い […]
第29話 合掌のこころ
人生には、むさぼりやまぬ貧欲があり、他人の幸福をみては、さびしく、抑え切れぬねたましさがあり、あんな奴殺してやりたいと思うような怒りがあり、自己を静かに反省することを知らぬ愚かさがある。こうした世界には合掌はない。 […]
第30話 智者は惑わず
近頃、若者の間にオカルト・ブームが再燃しているようだ。UFO・宇宙人を信じ、妖怪に魅力を覚え、予言や透視や超能力に興味を示す。正しい信仰や真実の仏法から言ってこれは好ましい傾向ではない。 戦国期の武将・加藤清正は正し […]
第31話 道徳と宗教はどう違うか
人間は、“道徳さえきちっと守って生きてゆけば、信仰や宗教など必要ではない”と言う人が、かなりたくさんいる。これは間違っている。 道徳とは人格を高めようとするところに生まれたものであり、宗教はほんとうの生きる道を教える […]
第32話 親孝行のすすめ
百歳を超えたきんさん、ぎんさんが、このところマスコミに引っ張りダコで、アメリカのテレビにも紹介され、国際的に有名な“双子ばあさん”ということになっている。 百歳を超えるお年寄りはこれからも増え続け、2025年には2万 […]
第33話 三つ子の魂百までも
年配のかたならば、あるいは覚えていらっしゃるかもしれない話があります。 それは、インドのラクノウというところで、昭和29年1月に発見されたオオカミ少年のことです。 当時これは世界中の話題になりました。 生肉しかたべな […]
第34話 “考える”ということ
人間には知性とか理性というものがあって、肉体や本能をその手綱のもとにコントロールするようになっています。動物はこの知性が全く発達しておりません。しかし、そのかわり、自然が与えた自動制御の習性があります。たとえば、狼など […]
第35話 冷静で秩序ある報道を
愛知県西尾市の中部中学2年の生徒がいじめを苦にして自殺した事件の後、全国各地で中学生、小学生の自殺が相次いだ。 事件に関する連日の報道が他の子供たちの自殺に何らかの影響を与えたのではないかと思われてならない。現にある専 […]
第36話 心と体はひとつのもの ─心身一如─
「病は気から」という古くからの言葉がある。普通は、単なるもののたとえとして、病人を勇気づける場合などに使われている。ところがこの言葉は、本来の意味で、実は今の新しい医学のひとつの見方でもある。 最近、ある新聞で高田明 […]
第37話 「こころ」の在り方を問う ─仏教の出番はいま─
地球をこれ以上汚してはいけないというので、省エネを進めたり、二酸化炭素の排出量を規制したりしている。もちろん、これは当面大切な対策であるけれど、そのように、起こってしまってから、慌てて一時的な尻ぬぐいみたいな処理をして […]
第38話 平均余命の計算法
自分の歳だとあと何年生きられるか? これは高齢者ならずとも、誰でも大なり小なり気になる事柄である。 大分医大公衆衛生医学教室の島岡章先生がこれについて、興味ある発表をされた。平均寿命というのは零歳児の平均余命、つまり […]
第39話 人間の拝みあいと法の下の平等
法華経の中に常不軽菩薩(じょうふきょうぼさつ)のことが説かれている。この菩薩はその名の通り、逢う人、見る人を拝んだ。そしてついに仏になったという。この人を拝み、人と人とが拝みあうということ、それを深く説き教えているのが […]
第40話 生命は決して「モノ」ではない
アメリカでヒヒから肝臓移植を受けた男性患者が手術後71日目に死亡したという出来事があった。私共仏教徒にとって、これはきわめて不愉快なニュースであり、やり切れなさを痛感させられた。 まず第一に、仏教の教えるところは、人 […]
第41話 心の眼をひらく修行
日本では、昔からいろいろな修行が行われてきた。修行の種類の多いのが、日本文化の特徴の一つであった。修行というのは、たとえば学校教育で学ぶ知識や学問をおさめるという、いわゆる知性にかかわることではなくて、知性のもうひとつ […]
第42話 悪魔ちゃんは絶対いけない ─子供は仏さまからのさずかりもの─
たいていの事には驚かなくなったわれわれだが、わが子に「悪魔」と名付けた親の出現にはいささか驚かされた。命名の正当性については、東京家裁八王子支部が結論を出したが、この命名の当否をめぐって議論がおこった。 私の名前、正 […]
第43話 老後の真の頼りは何か
総務庁は「老人の生活と意識に関する国際比較調査」の結果を発表した。それによると、老人にとって「一番大切なもの」は「家族・子供」という点では各国共通。だが、「2番目に大切なもの」で、日本は「財産」との回答がトップで、「友 […]
第44話 人間性の真実を受けとめるしつけと教育を
このごろ、私の近くで国立大学に通っていた秀才が、思いがけない非行と犯罪を犯して、退学の止むなきに至り、近隣を驚かせた。考えてみると、今の親や教育者たちは、大脳の新しい皮質のほうに、職業人となるためのおびただしい知能を詰 […]
第45話 めでたい長寿国日本であるために
不老長寿は長い間の夢であった。日本もいつの間にか世界の長寿国になり、あれよあれよというまに、世界一の長寿国になった。平成4年の統計によれば,女性の平均寿命は82.22歳、男性のそれは76.09歳で、国際比較では女性が連 […]
第46話 考える人は長生きする人
今日はどうして人類だけがこうも寿命が延びたかについて考えてみたい。 学者の指摘によれば、今から4000年昔の人類の平均寿命は18歳くらいだったという。他の哺乳動物とともに原野を駆け巡っていたころの寿命である。他の哺乳 […]
第47話 小欲知足と現代文明
仏教の大切な教えの一つに「小欲知足」というのがある。あまり欲ばらないで、満足することを知れというのである。今日、これをいうと笑ってしまう人が多い。物を生産し、物を豊かに消費することが幸せという人生観がはびこってしまった […]
第48話 生きがいとは
高齢社会といわれるいま、しきりに"生きがい"ということがいわれています。ところが、この言葉が大変軽々しく使われているように思います。なにかにつけて抽象的に"生きがい"といいますが、生きがいというのは、"人生の目的"をは […]
第49話 そんなことをすると罰があたる
ある隠居のご老人が言いました。 「この頃飛行機が落ちたり、バスがひっくり返ったり、悪いことばかりつづく。みんな人間が悪いから罰があたっとるんじゃ。」 すると、その老妻のお婆さんが 「そうじゃのう、お経の中にある末法の世 […]
第50話 「眼」からの超越
昔、反町無格という剣士がいました。 諸国武者修行の途次、とある山中を歩いていて、一本の丸太橋にさしかかりました。下を見るとまさに千扨の断崖、そして激流岩石、眼もくらむばかり。どうにも膝頭がガタガタ震えて渡れません。 「 […]