菅野秀浩のちょっといい話
第1話 おもいやり(1)
私は八人兄姉の末っ子である。過日、老境著しい兄姉と揃って温泉旅行に出かけた。 興に乗り「何がしたかった?」の問いに、間を置かず、異口同音に「一人暮らしッ」の答えがかえってきた。 そういえば、朝から晩まで、夜さえ一人 […]
第2話 おもいやり(2)
かたわらの小さな漢字辞典を取って、何げなく「おもう」という言葉を引いてみた。あるある「思・念・惟・想・意・憶・懐・情」これみんな「おもう」という事で、大きな辞書を開けばもっとあるに違いない。 これには少なからず驚かさ […]
第3話 二者択一
1997年(平成9年)7月に公布され、その年の10月16日に施行された「臓器の移植に関する法律」は、人間の死を法律で定めたことで多くの議論を呼び、現在も脳死の判定基準や、臓器の提供者本人の意思確認ということに、納得でき […]
第4話 寿命
ホテルの名フロントマンとは、いかに空部屋をなくすかにあるという。だから、キャパシティ100室のホテルでは、予めキャンセルが生じるのを予想して、105室とか107室の予約を受けて、当日読みどおり5~7人の取り消しがあり、 […]
第5話 こころの洗濯
お寺や神社で賽銭箱に向かって、コインを投げ入れ、思いつくだけの願い事をしている人がいる。あれは本当に効き目があって、願い事も叶うのだろうか? チャリンと一個投げ入れて、すぐに願いが叶うとしたら、本当の所安すぎるし、本 […]
第6話 おかげさま(1)
お釈迦様によって説かれた仏教のうち、殊にシルクロードを渡り中国・朝鮮半島を経て、日本にもたらされた北伝仏教は、大乗仏教と称され、大きく花開き、その国の生活そのままが仏教的な教義に結び付くという、その国の民族性となって、 […]
第7話 おかげさま(2)
1995年(平成7年)は、日本におけるボランティア元年という方がいる。 あの恐ろしくも痛ましい、阪神大地震災害の起こった年である。あの日を境に、全国より被災地に対する援助の手がさしのべられ、たくさんの方々が現地へ駆け […]
第8話 おかげさま(3)
世界の宗教は数に限りは無いが、身近な宗教で対照的に言われるのは、やはり「仏教」と「キリスト教」であろう。どちらも会派はこれまた限りが無いくらいだが、二教の、その根本的教義によって立つべきことと、めざす心構えを、一言で述 […]
第9話 知識と智恵[慧](1)
戦後半世紀を過ぎた今、教育の現場では、教育基本法の見直しやら、教育のあり方、教師の資質に至る問題が提起され、文部省が音頭を取って、その方策が論じられている。 現代日本の近代化と文明の発展は、文化、経済、科学等全てを含 […]
第10話 知識と智恵[慧](2)
最近、車に同乗させていただくと、必ずカーナビゲーションシステム(カーナビ)が設置されていて、どんなに遠くても、かなりの小路も的確に情報が与えられて、誠に便利なものができたものだと驚かざるを得ない。しかし、何度か乗り合わ […]
第11話 知識と智恵[慧](3)
「毒箭(どくせん)を抜かずして空(むな)しく来処を問わざれ」この言葉は、弘法大師が比叡山の最澄上人(伝教大師)から『理趣釈経』という密教経典の借用を書面で依頼されたのに対し、断りの返書をしたためた中で述べられたものであ […]
第13話 互助 II 四苦八苦
お釈迦様はカピラ城の王子様として生まれましたが、ある日、城の門から街に出られ(『四門出遊』という良く知られた話)、人間には四つの苦しみがあることを知ります。 この世に生を享けるという事、老いる事、病に冒される事、死が […]
第14話 互助 III 香奠
お葬式になると必ず、お悔やみの印として「香奠=典(こうでん)」を、先様に持参することになるが、今日では香奠の意味も目的も理解しない方が多いと思う。 香奠は、もともとインドにおいては、遺体の腐臭を消すために、香木を焚き […]
第15話 互助 IV 布施 イ
最近の社会問題の一つに、仏教界の戒名問題があり、全日本仏教会は「戒名(法名)料という表現・呼称は用いない」と、発表した。このことは、真面目に寺院運営をなさっている住職にとっては、当然の事で、いまさらと言う感じだが、私見 […]
第16話 互助 V 布施 ロ
NHKの番組クローズアップ現代で、「戒名料」を取り上げたプロデューサーが、番組俎上は戒名料は宗教の現代問題なのだといい、ある評論家は消費者問題だと言及した。 これは端的に、今の仏教事情を言い表していて、宗教そのものが […]
第17話 互助 VI 檀家
先述(第16話 互助Ⅴ 布施)のとおり、日本仏教は寺の維持管理や堂宇の造立には、普請(ふしん:建設の仏教語で、広く寄進を集めてお堂等を造営すること)の語が示すように、檀家制度という特定の組織によって、その賄いや経費が集め […]
第18話 「空(からっぽ)」という事
インドで開かれ北伝した大乗仏教は、シルクロードを経て中国へ、更に朝鮮半島を進んで日本に根付くが、その教えをたった一言で説明すると「空」ということになる。 私たちが、常々存在していると思っているものは、勝手に自分で思っ […]
第19話 「空(からっぽ)」 II
良寛和尚の偉大さというか名僧たる所以は、子供に愛され、大らかな生き方と、その残された書の素晴らしさは言うに及ばずながら、実は大乗仏教の「空」の教えを、見事に体得し実践された方だということにある。 和尚は、新潟県の西蒲 […]
第20話 バーミヤンの大仏破壊
世界的な文化遺産であるアフガニスタンのバーミヤンにある仏教遺跡が破壊された。 その模様はテレビや写真でしか伺い知れないが、砂ぼこりを巻き上げた爆破の瞬間は、眼を覆う有り様で、大石仏は全壊と言ってよいほどに無残に腰から下 […]
第21話 映像の嘘 I
終戦間際の誕生の私(と言うことは、映画産業の一番華やかな昭和三十年代を、青春時代と共に送った)にとって、映画程心ときめかせたものはないし、文化もファッションも憧れも、情報全ての収集源であったから、月平均10本の割りで、 […]
第22話 映像の嘘 II
先章の映像の重大な社会問題とは、創られた嘘の事象を、あたかも本物の如く思い込むという事にある。そんなことは現代では当たり前で、別に重大なことではないように思われがちだが、そのものが嘘だとわかって、嘘を楽しむ分には良い。 […]
第23話 映像の嘘 III
スティーブン・スピルバーグの「ジュラシック・パーク」や、「ゴジラ」をご覧になっただろうか? SFXを駆使する90年代の映画産業は、ハイテク技術革新の企業戦争と言われ、80年代後半から発達したデジタル技術により、CG( […]
第24話 死後の決定権
1992年、「サザエさん」で有名な漫画家長谷川町子さんが亡くなった時、個人の遺言で35日間公表を伏せたことが始めてのように記憶するが、その後有名な方では柴又の寅さんの渥美清さんが、1996年「死んだ顔を見せるな。家族で […]