仏教用語
第65話 涅槃雪(ねはんゆき)
寒い東北では2月13、4日になると、きまったようにうす汚れた雪の上に美しい真っ白な雪が舞い降りてくる。 これを「涅槃雪というのだ」と、私に教えてくれたのは、いまは亡き隣りの老僧だが、その老僧が、「ああ、涅槃雪だ」と、さ […]
第66話 泥中の蓮華
西郷隆盛の座禅の師である無三(むさん)和尚は、藩主島津侯の菩提所福昌寺の住職に迎えられた。 晋山式(しんさんしき)といって住職就任のとき、無三和尚は型のごとく須弥担上(しゅみだんじょう)にのぼって香を焚き、いよいよ雲水 […]
第71話 己心の弥陀
極楽浄土は西方十万億土のはるか彼方に、と教える浄土門のなかにも、その極楽浄土を自らの心の中に引張り込んだ「己心の弥陀」「己心の浄土」が説かれている。 「己心の弥陀」を判り易く説示した話がある。 四万年ほど前、仙台に損翁 […]
第77話 天上天下唯我独尊
4月8日、ルンビニーの花園でお生まれになったお釈迦さまは、そのまま四方に7歩歩いて、右手を上に、左手を下にのばして、 天上天下 唯我独尊 (天が上、天が下、我こそ最も尊きものなり) と、さわやかに宣言されまし […]
第78話 ただで笠をやってどうするんですか
おとぎ話から演歌にいたるまで、出てくる仏といえば殆どがお地蔵さまで、お地蔵さまは直に庶民の仏である。 幸田文さんの話だが、母親代わりに孫の授業参観に行ったところ、国語の時間で「笠地蔵」の授業中だったそうだ。 貧しい老 […]
第93話 涅槃会に思う
まさに度すべきところの者はすでに度し終わって、大勢の弟子、仏教守護の神々、そして多くの獣物にまで取り囲まれ、嘆き悲しまれて涅槃に入りたもうお釈迦様ほど偉大な別離の光景を演出した方は歴史上かつてなかったし、今後もないこと […]
第94話 六道
六道とは、私どもが生活している心のことである。 地獄は最低最悪、苦しみの極限の世界、餓鬼はいくらあってもまだ足りない、まだ足りないとイライラ、ガツガツしている貪りの世界、畜生は自分で自分をコントロールすることができず、 […]
第99話 因果応報
競馬に障害競争があるという。塀を越える際、3メートルの塀を越えるのに4メートル飛んだのではそれだけ遅くなる。 3メートルなら3メートルぎりぎりになるべく低く飛んでうしろ足のひづめの半分が塀のへりにしっかりつく、そのよう […]
第100話 お地蔵さま
釈尊が入滅して56億7千万年経つと弥勒菩薩が弥勒仏となってその世に出現される。 それまでの末法無仏の世界を仏に代って一切衆生を導くようにと釈尊より委嘱されたのがお地蔵さまである。 地蔵さまは菩薩なので、観音様や文殊普 […]
第2話 お金とかあちゃん
「とうちゃん、かあちゃんとお金と、どっちがいい」「そりゃ、かあさんさ」ととうちゃんがいった。「一おく円でも」「うん」「百おく円でも」「かあちゃんはお金にかえられない」「ほんと」 かあちゃんとけんかして、おいだそうとしても […]
第9話 幸せとは無事であること
仏教では幸福のことを「無憂」という。憂い、つまり心配のないのが幸福なのだという。 確かに、人間にとって"無事である"ということこそ、幸福の正体であるといえよう。幸福とはこのように消極的なものなのである。憂い、心配のない […]
第10話 十二月八日は釈尊成道の聖日
十二月のことを昔から「シハス」といいます。これを師走、四極、極月などと書きます。 新井白石(江戸中期の儒者・政治家)の説によりますと、シハスのシはトシ(年)ということばの転じたものであり、ハスとはハツ(果つ)つまりも […]
第15話 真実の自己を知る
わたくしどもが順境にあるということは、仏教的にいうなら、五欲煩悩(性欲・財欲・食欲・名誉欲・安逸欲)の酒に酔いつぶれていることであります。 ところが、わたしどもは、いつ逆境にたたされるかわかりません。粒々辛苦して築い […]
第22話 感謝の原理
日本医学界に大きな足跡をのこされた杉靖三郎先生がカナダヘゆかれたとき、ストレス学説で有名なハンス・セリエ博士を訪問されたそうです。 杉先生はセリエ博士に、 「現代人をストレスから救う良い方法はないでしょうか」 と質問され […]
第26話 山川草木悉皆成仏
ある修行僧が草も木も成仏するという話を聞いて、どうしても理解できず、尊敬する学僧に、自分で考えたり修行したりすることのない草や木がどうして成仏するのでしょうかと尋ねた。 そのとき、学僧は、あなたは草木成仏のことを尋ね […]
第27話 身体と心は分けられない ─感謝の心は健康のもと─
「健全なる精神は、健全なる身体に宿る」 これはローマの詩人ユベナリスの言葉を翻訳したものであることは誰もが知るところであるが、詩人ユベナリスの本来の意味は、実は、 「我は欲す、健康なる精神を健康なる身体に」 という […]
第47話 小欲知足と現代文明
仏教の大切な教えの一つに「小欲知足」というのがある。あまり欲ばらないで、満足することを知れというのである。今日、これをいうと笑ってしまう人が多い。物を生産し、物を豊かに消費することが幸せという人生観がはびこってしまった […]
第53話 殺すなかれ。殺さしむなかれ。
仏教の根本の戒めが不殺生であることは、仏教がいのちの教えであることに由来する。釈尊のお言葉をそのまま集めたパーリ語のダンマ・パタという原始仏教経典の中に「一切の者は刀杖(武器)を恐れ、一切の者は死を恐る。己が身に思いく […]
第59話 大災害は人を試す
大きな災害は人を試すとか、ふだんは見えなかった人の心が見えてくるとかいうが、全くその通りである。 阪神大震災の報道を見て、思わず涙ぐむような場面にしばしば出あった。 「こんなときや、みんなタダや。持っていって食べて […]
第62話 地獄、極楽はこの世にあり
私の知人の息子で16歳の男子高校生がこの頃、ある新聞社の社会事業団を通じてユニセフに金50万円を贈った。 この50万円というのは実は拾った金。昨年夏、彼は通学途中、電車の座席に落ちていたのを駅員に届けた。 しかし落 […]
第66話 涅槃ということ
お釈迦様がおなくなりになったことを、涅槃(ねはん)にはいられたと申します。そしてそれは二月十五日であったと伝えられています。 釈氏要覧(しゃくしようらん)という書物に、「二月十五日、仏涅槃の日天下の僧俗に營会(えいえ […]