格言
第6話 一度ただ一度
幕末の政治家として著名な大老、井伊直弼は、今から一八〇年前、彦根藩主井伊直中の十四男として生まれた。 庶子として、その一生を部屋住みに終わる宿命にあった若き日の彼は、自分を埋木にたとえ、その居室を埋木舎と称していたが、 […]
第10話 花 誰が為にか開く
「春色高下無く、花枝自ら短長」 という句がある。 春の気色、風情には高下の別はないが、花をささえる枝にはおのずから長短があるように、人間はじめ禽獣草木すべては宇宙の大生命の発露であり、本体的には「春色高下無し」で一味平等 […]
第18話 冷暖は身体で覚える
文字や言語はたいへん便利なものだが、案外不完全で不便な一面もある。たとえば右はどちらか、左はどちらか、これは文字や言語で教えられたものではなく、身体で悟っていることなのである。 試みに辞書を開いて「右」の項を見ると、「 […]
第20話 六根清浄どっこいしょ
日本人は昔からきれい好きな、清潔を愛する国民で、その清潔感は道義感覚と表裏一体になっていた。 品位の高い人を「人格高潔」「きれいな人」「清潔な人」といい、その反対の人を「不潔」「きたない」「よごれている奴」などといった […]
第26話 対人の四法
人びとをひきつけ、救うための四つの徳、行為を「四攝法(ししょうぼう)」という。 布施 物でも心でも施し与える。 愛語 やさしい言葉をかける。 利行 ためになることをする。 同事 心を一にして協調する。 […]
第29話 相続也大難
「翔んでる」という言葉が使われて久しい。 人間が左右の足を交互に出して一歩一歩前進するのに、大空を自由自在に羽搏く鳥は人間の及ばない能力を持っている。 同様に、恵まれた才能をフルに発揮して自由闊達な活動を続ける人は鳥の […]
第30話 縁を大切に
もっともポピュラーなお経、『般若心経』というと、「色即是空」を連想する人が多いかと思う。 ここにいう「色」とは、色欲とか色情のことではなく、存在するものすべてのことなので、「色即是空」とは、あらゆる物はすべて空だという […]
第31話 いまここに生きる
道元禅師は二十四歳のとき、真実の仏法を求めて、明全和尚とともに入宋した。 青年僧道元が天童山景徳寺(浙江省)におったときのこと、ある日、病気療養中の明全和尚を見舞うため、東の回廊を通って仏殿の前まで来ると、一人の老僧が […]
第34話 運
昔から、事を成し遂げるに必要な条件として、運・鈍・根、つまり幸運と愚直と根気の3つが挙げられている。 「運去って金、鉄となり、時来たって鉄、金となる」という言葉がある。ひとたび運に見放されると、持っていた金も鉄の値打 […]
第41話 知識と知恵
知識は「知識を得る」というように外から学び取るもの。、知恵は「知恵を磨く」とか「知恵を出し合う」というように、持って生まれた内なるものを磨くことによって外にあらわれ出るもの。 昔、道学者のところへ一人の青年が訪れ、処 […]
第44話 他を利する
満員のバスに、途中から一人の女性が大きな荷物を提げて乗ったが席がない。誰も立ってくれない。運転手はしきりにバックミラーを見ていたが、たまりかねたとみえて、「奥さん、席がなくてお困りですね。僕が立ちますから、ここへお掛け […]
第55話 神仏と共に在る心を育てる
「三つ児の魂百まで」といい、幼稚園から小学校時代にかけて、人間の魂の方向、性格ができあがるといわれる。だからこの時期に、神や仏という絶対者と共に在るという確信を持たせることが大切なのだが、無宗教教育に育てられた日本人に […]
第59話 宗教なき教育は賢い鬼をつくる
明治五年の学制発布以来、宗教は教育のラチ外に押しのけられ、爾来日本国民は公教育の場では無宗教教育に育てられた。 しかし教育の基盤に、宗教がいかに大切なものであるか、それはいみじくも聖徳太子が十七条憲法の第二条に明確に述 […]
第76話 羊頭狗肉
今年は未年。(※注) 未は動物でいえば羊。羊というと「羊頭を揚げて狗肉を売る」という言葉を思い出す。 羊頭を揚げて狗肉を売る悪徳商法は昔も今も変わりない。 特に今日は舶来一流ブランド商品のニセモノが横行している。 昨年 […]
第5話 良い人間関係をつくる「会話のコツ」
こんな話がある。 寒い日、彼をにくからず思っている彼女が彼に声をかけた。 「お寒うございます・・・」 すると彼は 「ええそうですね」 ポツリと、これだけ。これではとりつくしまもない。彼の友人が、 「あんな時はアイソの一 […]
第7話 ありがたきかな、この命
昔の道話(人間の生きる道を教える話)の中に、“栗の食べ方”というのがある。 ここに十個の栗がある。この栗をおいしく食べるには、最初に一番おいしそうな栗を食べる。次に九個のうちで一番おいしそうな栗を食べる。次に八個のう […]
第13話 人間は二度誕生しなければならない
文豪トルストイはこう言った。 「人間は二度誕生しなければならない。一度は母親によって肉体の誕生を、もう一度は宗教によって魂の誕生をとげねばならぬ。この二度の誕生を経てはじめて本当の人間になるのだ」 と。味わい深い言葉だ […]
第16話 欲望を越えて心の尊厳を
その昔、京都西の洞院に紀伊国屋という紙屋があった。主人は亦右衛門といった。大阪の本店から、百両の資本金を千両に殖やせという言い付けのもとに、日夜営業に肝胆を砕いた(工夫し、努力した)。 間もなく千両になったので、 「仰 […]
第17話 小さな横綱、千代の富士
「やることはやった、思い残すことはない」 このさわやかな言葉を残して、小さな大横綱、千代の富士は土俵を去った。史上最多の1415勝。戦後最多の53連勝等々の大記録。ことに休場明けで迎えた9場所のうち6場所の優勝は驚きのほ […]
第25話 心を育てなければ体はついていかない
生まれたばかりの赤ちゃんは実によく泣きます。産声に始まる赤ちゃんの泣き声は、不快の表現であると言われています。 完全に保護されていた胎内から出てきて、音、光、においなど、あらゆる外界の刺激に対応しなければならないので […]
第31話 道徳と宗教はどう違うか
人間は、“道徳さえきちっと守って生きてゆけば、信仰や宗教など必要ではない”と言う人が、かなりたくさんいる。これは間違っている。 道徳とは人格を高めようとするところに生まれたものであり、宗教はほんとうの生きる道を教える […]
第48話 生きがいとは
高齢社会といわれるいま、しきりに"生きがい"ということがいわれています。ところが、この言葉が大変軽々しく使われているように思います。なにかにつけて抽象的に"生きがい"といいますが、生きがいというのは、"人生の目的"をは […]