葬儀
第6話 一度ただ一度
幕末の政治家として著名な大老、井伊直弼は、今から一八〇年前、彦根藩主井伊直中の十四男として生まれた。 庶子として、その一生を部屋住みに終わる宿命にあった若き日の彼は、自分を埋木にたとえ、その居室を埋木舎と称していたが、 […]
第36話 「供える」「食べる」
10歳で夭折した坊やの四十九日の法事があって、お斎の席に着いた時、床の間に安置された位牌と写真を見て、“坊や、私たちだけ頂戴して済まんなァ”という気になり、ジュースをコップに移してお供えした。するとしばらくして末席にい […]
第14話 互助 III 香奠
お葬式になると必ず、お悔やみの印として「香奠=典(こうでん)」を、先様に持参することになるが、今日では香奠の意味も目的も理解しない方が多いと思う。 香奠は、もともとインドにおいては、遺体の腐臭を消すために、香木を焚き […]
第24話 死後の決定権
1992年、「サザエさん」で有名な漫画家長谷川町子さんが亡くなった時、個人の遺言で35日間公表を伏せたことが始めてのように記憶するが、その後有名な方では柴又の寅さんの渥美清さんが、1996年「死んだ顔を見せるな。家族で […]
第94話 現代葬儀事情I
多分反論もあろうと思うが、葬儀についての事情を申し述べる。 今世紀の半ばには、3人に1人は65才以上という。ということは、廻り中(私を含めて)年寄りだらけ、どんなに長生きしたって、極近にはみぃ~んな彼方へ逝くわけで、 […]
第95話 現代葬儀事情II
現代の社会問題の要因は、全てとは言えないが、かなりの比重で本来の姿が「見えなくなった」ことにあると思っている。 葬儀もそうで、「葬式仏教」という嘲笑も含めた、問題視される昨今のお寺を取り巻く風評も、葬儀の正しい姿が「 […]
第96話 現代葬儀事情III
葬儀に、ご馳走を振舞うようになったのは、いつ頃からだろう。多分、住宅事情が変わって、一戸建てのマイホームを持てるようになった頃で、個人尊重(プライバシー)を理由に、家族も自分一人の部屋を持つ事が、当たり前になった時代で […]
第97話 現代葬儀事情IV
親族や同朋や近隣が、相互互助の分かち合いの精神で営まれていた祭事は、業者と呼ばれる商売の専門家によって運営されるようになり、本来の姿を見えなくするほどにその意識や形式は、過激に変化を遂げた。 元々業者は存在したが、彼 […]
第98話 現代葬儀事情V
科学や文明の発達は、生活や習慣をより良く変えたが、時には残酷な様も呈する。 臨終の有り様もそうで、死の瞬間は肉親や親族の励ましと慟哭の看取り場であったが、蘇生を重視する現代医学では、最後まで治療を施し、馬乗りになる人 […]
第71話 言いたいことが後に来る……
世に言われる……“奴は酒は飲むが、仕事はできる”なら使おうと思うが“仕事はできるが、酒を飲む”だと使う気にならぬ……と。これは単に、言葉の順序が大切だというだけでなく、私たちは、本当に言いたいことは最後に言うという習性 […]
第75話 勘違い親孝行その1
大学卒業後にすぐ、栃木県の私立の商業高校の英語の教師を1年やった(1年だからやったうちには入らないけどね)。 ヤンチャな子供たちに人間への不信感をつのらせ、父の具合も良くなかった(肝硬変だった)ので、お寺の仕事を手伝 […]
第97話 ビデオで撮るのは子どもばっか?
運動会で、子どもがゴールした時に見るのが親の目じゃなく、レンズの目なんてぇのはマズイッスヨというのは第44話でした。誕生から、お宮参り、七五三、入学式、家族旅行など、おりにふれて撮られる映像は、成長したわが子の披露宴で […]
第98話 花束贈呈の謎
私は覚えていないけど、どうやら私の母は、私を口から先に生んでくれたようで、司会をさせてもらった結婚披露宴は10をこえる。多くは、来賓の肩書で専門用語が多いお坊さんの披露宴だ(来賓の中で、黒の洋服で来るお坊さんが多い時、 […]
第106話 大往生って言わないで
70歳の男性が亡くなった。その一年ほど前から身体の具合が悪く入院したことは知っていた。しかしその間、家族が先祖の墓参り来た時に「お父さんの調子いかがですか」とは、聞けなかった。お坊さんがそんなことを尋ねれば“死ぬ時期を […]
第167話 あなたは、どうするの?
今回は、“山猫美紀”さんからの「仏教は自殺についてどう考えてるの」に関連して、自ら命を絶つことについて、ご一緒に考えてみます。 玄侑 宗久(げんゆう そうきゅう)さんと瀬戸内 寂聴(せとうち じゃくちょう)さんの対談 […]
第183話 気持ちの切り換え
年に何回か慶弔が重なることがある。結婚式に参列した日に檀家さんのお通夜、お葬式をやった日に仲間うちの楽しいパーティなどである。 数年前、たまたま家内の所に遊びにきていた方がいた。私は檀家さんのお葬式から帰宅して、ろく […]