第23話 宗教者と長寿
最近、郡山女子大学の森一教授によって、たいへん興味深い発表がなされた。
それは職業別平均寿命表というのであって、十種類の職業についてその平均寿命を調査したところ、上位の職業は以下の通りである。
一位 宗教家
二位 実業家
三位 政治家
四位 医師
最長寿者は僧侶などの宗教家であったというのである。
そして一番寿命が短いのは詩人などの芸術家だという。
森教授の発表でさらに興味深いのは、遠く奈良、平安、鎌倉、安土桃山時代から、近く江戸、明治、大正、昭和にかけて、僧侶の長寿順位はいつもトップで、各時代とも平均寿命は70歳前後になっている。
今でこそ人生80年といわれ、70歳という寿命はあまりピンとこないが、人生50年といわれた時代に、それより20年も坊さんが長寿であったということは確かに考えさせられる。
奈良時代以来1200年以上にわたって、今日にいたるまで、他の職種よりも坊さんが長命であることの要因として、森教授は二つあげている。
1 過食を避け、心身の修行に励んだこと。
2 森林浴効果や読経、説教による精神の安定。
これは一億総グルメ時代といわれ、美食や過食からくる病気に悩む現代人、そして、自然を破壊し、欲望の充足こそ善であるという人生観に立って、あくせく働くのみで安定した精神を失ったストレス病の現代人にとって大きな教訓であり、また警鐘でもあろう。
内なる緊張した精神と安らぎのある豊かな心とは、いつの時代でも常に求められるべきことである。