第15話 かわかない心

挿し絵 秋田のカニさん(もちろんペンネーム)からお題「渇かない心」をいただきました。ありがたいことです。そこで、第8話でご紹介したパーソナリティの村上正行さん(78)の忘れられない一言というのをご披露します。

 村上さんがまだNHKのアナウンサーの時、当時朝日新聞にいたジャーナリストの渡辺紳一郎さんからこう言われたんだそうです。

「村上君、君も放送局にいるんだからジャーナリストの端くれだ。だとしたら、いいか。銀座の柳に息を吹きかける気持ちを忘れるなよ」

 最初は何のことだかわからなかったそうですが、数年して気がついたそうです。
――――例えば、銀座四丁目の交差点から隣の新橋の駅まで歩いていく。目的は新橋の駅に行くことです。歩いていると、銀座通りの柳の枝が、風にふかれて自分の目の前にたれてきた。その時に、自分とその柳の出合いに関心を持ち、その枝をひょいとつまんで、フッと息を吹きかけるくらいの気持ちを忘れるなということだったんです――――

 ものごとへの関心と心の余裕、そして、ちょっとした茶目っ気(もう死語ですかねえ?)をいつでも持っているということです。「渇かない心」というのはまさに、それだと思います。

 カニさん、書いてみタラバ、けっこう書けました。どうですカニ?
 次回は「自慢話」でいきます。