第24話 立って半畳、寝て一畳

挿し絵 これは、ひと一人が必要な面積です。ひいては、所詮立っても半畳分、寝たって一畳分の面積しか占有できないのだから、大きな家が欲しいとか、あまり背伸びをしなさんなという意味で使われます。

 ここまで読んで「まったくだ、どうせ人間なんてそんなもんだ」なんて、人間を過小評価しないでくださいよ。今回言いたいのはそんなことじゃないんです。人間の大きさを、実際の体積だけで計算するのは変じゃないかと思うんです。

 確かに占有面積 or 容積にしてみれば、私たちの身体は、部屋一つの大きさや、野外の大空間に比べて小さなものかもしれません。しかし、その身体は、笑顔で「おはよう」と挨拶し相手も笑顔にさせ、友達と肩をたたきあいながら笑い、共に悲しみの涙を流し、新緑の緑を抜けてきた風に心地よさを感じることができる身体でもあります。

 そんなふうに考えているので、私は「一寸の虫にも五分の魂」っていう言葉も好きじゃありません。いや、正直に言えば嫌いです(なんだか、ひろさちやさんの文章みたいだ……)。

 「一寸の虫にも無限大の魂」の筈ですよ。
「立って半畳、寝て一畳。収まりきらないこの心!」――春の空を見上げて、そんなことを考えてみませんか。

 次回は、空間つながりで「維摩(ゆいま)の部屋」でいきます。