第41話 言霊

挿し絵 言葉がもつ不思議な霊力のことをコトダマ(言霊って書きます)、英語で言うと"the miraculous power of language"だ。

 かつて森で水滴のレンズ作用か、あるいは乾燥した葉どうしの摩擦か、自然発火がおこった。そこに遭遇した私たちの遠い先祖は思わず悲鳴をあげた。フィーッ!それが火という言葉となり、英語のfireのfiになったらしい。ヒエーッ、知らなかった……

 カミナリが鳴り始めると「クワバラ、クワバラ」と言う。これも「桑原」という土地にはカミナリが落ちたことがないので、「ここは、桑原だ」とウソをつく。すると雷さまは「そっか。じゃ落とすわけにはいかないな」というカラクリだ。雷さまもお人好しだ。

 離婚したければ「私はあなたが嫌いです」と3日間言いつづければいい、というのをどこかで読んだことがある。内容もダイレクトすぎるし、文章も直訳っぽいから外国のものだろうが、おそろしい話だ。あまりにもおそろしいので今でも覚えている。

 ありがとう、という言葉もいい言霊をそなえてる。年に二度くらいこの言葉の語源に感動する20代のお坊さんに会う。「有り難うって、そんなことはなかなか起こらない、有ること難いって言葉なんですよね」
それ以後、この言葉の霊力に気付いた若者は"thank you"と「有り難う」を区別して使うようになる(私もその一人です)。

 出流さん、いいリクエスト有り難う。次も言葉。「元気?」に、なんて答えてます?