第61話 ショートケーキを二人でどうやって分ける?

挿し絵 仏教についてとてもわかりやすく解説してくれている人に、ひろさちやさんがいる。そのひろさんの講演で、10年前に聞いた話からスタートです。

 ここにジュースのビンと空のコップがある。さて、このジュースをABの2人で文句無く分けるには、どうしたらいいか?計量カップなどはない。
 ひろさんの話だと、この娑婆(しゃば)で一番いいのは、次の方法だという。
 まずAさんが自分で半分と思うだけ、ジュースをコップに注ぐ。そしてBさんに言う。「お好きなほうをどうぞ」と。――――これで文句は出ないはずだ。普通私たちは“2人で分ける”というだけで2等分にこだわってしまう。まずこの“こだわらない智恵”を持たなきゃダメよ!というわけだ。
 “ところがです”とひろさんは続けた。これはやはり娑婆の智恵なんだそうだ。仏の智恵じゃない。なぜかというと、自分の好きなほうを取ったBさんは思う。“Aはトリックを使って私が少ない方を取るようにしたんじゃないか……」と。一方、残ったほうを取ったAさんは思う。「シマッタ!Bが取ったほうが多かったかもしれない……」って。なるほど、世の中、つまり娑婆というのはそんなものだろうと思います。

 この話を聞いて数週間後のこと。我が家の冷蔵庫にショートケーキが1個残っていたことがあった。私はジュースより面白そうだと思って、小学生の長男と幼稚園に通ってた次男がいたので、長男に言った。
「お前が半分だと思うように切ってごらん。そして、弟に先に選んでもらうから」
 彼は1分以上も考えあぐねた。そりゃそうだ。イチゴがネックなのだ(バースデイケーキで板チョコなんかが入るとますます面白いことになる)。結局、彼は自分が取りたいほうを弟に取られてしまった。
 しかし、それ以来面白いことが起こった。何か平等に分けられないものが残った時、長男は弟と妹に「どうぞ」と笑顔で身を引くようになったのだ。

 いけねえ。ここから先が大事なトコなのに……。余白が足りない。続きは次回「智恵(ちえ)智慧(ちえ)」で。チェッ!なんて舌打ちしちゃだめです。