第63話 お尻に電気コードついてる?
冬になると密蔵院では、本堂の檀家さんが座る椅子の足元に細長いホットカーペットを敷く(6枚まで連結できるスグレモノである)。エアコンよりずっと温かく感じるからだ。
設定温度はダニをやっつけると書いてあるレッドゾーンの“高温”より、すこし低い温度だ。それでも足を載せ続けるとけっこう熱い。だから法事の始まる前には必ず言うことにしている。
「熱かったら温度を下げてください。やりかたが分からない人は、時々足を持ち上げてください」
で、先週の法事での話である。
小学生の男の子が法事に参列していた。お経を終えてクルリと向きを変えて彼に言った。
「君、最後に手を合わせてもらったけど、自分の手の温度、分かった?」
「うん」
「そうか。で、足元はどうだった?温かい?」
「うん、ホットカーペットがあったら」
「そうか。でもどうしてカーペットは温かなんだろうね」
「電気コードでつながっているからだよ」と彼は、コードを指さした。
「そうだよね。電気の力でずっと温かになってるんだよね。だけどさ、君には電気コードついてないよね。お尻とかについてる?」
彼はお尻をさわりながら後ろを振り向いた。もちろんコードは……ない。
「電気もないのに、君の体温って一日中36度くらいになってるんだよね。これって、すごいよ。ご飯を一日三回、ちゃんと食べれば、一年中36度に温めつづけてくれるんだもの。そんな君を生んでくれたお母さんやお父さんに、後でいいから、ありがとうって言ってね」
なんと押しつけがましい話だろうか……と思いつつ、冬の法話の定番になっている。読者の皆さま、ホットカーペットに座る時にはコンセントを見ながら、どうかお尻(自分のですヨ!)を触ってみてください。
さて、次回は「ニクダイワニ?」でいきます。じつはこれは食べ物なんですが……さてその正体は?