第26話 対人の四法
人びとをひきつけ、救うための四つの徳、行為を「四攝法(ししょうぼう)」という。 布施 物でも心でも施し与える。 愛語 やさしい言葉をかける。 利行 ためになることをする。 同事 心を一にして協調する。 […]
第27話 晴れてよし 曇ってもよし
いつも三月、花のころ。女房十八、わたしゃはたち。子供三人親孝行。使って減らない金百両。死んでも命があるように。 このようになれば、まさに「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」だが「月にむら雲、花に風」で、何事も思うに […]
第28話 心機投合
親鳥が卵を抱いて二十一日、孵化の時機が到来して、卵の中の雛鳥が殻を破ってまさに生まれ出ようとする時、卵の殻を内側からつつく。 これを「啐」という。 ちょうどその時、親鳥が外から同一点をつつく。 これを「啄」という。 この […]
第29話 相続也大難
「翔んでる」という言葉が使われて久しい。 人間が左右の足を交互に出して一歩一歩前進するのに、大空を自由自在に羽搏く鳥は人間の及ばない能力を持っている。 同様に、恵まれた才能をフルに発揮して自由闊達な活動を続ける人は鳥の […]
第30話 縁を大切に
もっともポピュラーなお経、『般若心経』というと、「色即是空」を連想する人が多いかと思う。 ここにいう「色」とは、色欲とか色情のことではなく、存在するものすべてのことなので、「色即是空」とは、あらゆる物はすべて空だという […]
第31話 いまここに生きる
道元禅師は二十四歳のとき、真実の仏法を求めて、明全和尚とともに入宋した。 青年僧道元が天童山景徳寺(浙江省)におったときのこと、ある日、病気療養中の明全和尚を見舞うため、東の回廊を通って仏殿の前まで来ると、一人の老僧が […]
第32話 茶に逢うては茶を喫し 飯に逢うては飯を喫す
平常心とは、読んで字のとおり、「平生あるがままの心」のことだが、さればといってわがまま勝手な日常の心のことではない。 飛行機に乗って雲の上に出ると、下界は雨でも上空はからりと晴れた青空である。同様に、私どもの日常はモ […]
第33話 去年とや言はむ 今年とや言はむ
去年(1995年のこと)は中秋の名月が二度眺められた。八月に閨八月が続いたためであり、一年、十三ヵ月となったので、今年の旧の元日は大幅に遅れて二月十九日となった。立春は二月五日なので、旧年中に春を迎えるというわけである […]
第34話 運
昔から、事を成し遂げるに必要な条件として、運・鈍・根、つまり幸運と愚直と根気の3つが挙げられている。 「運去って金、鉄となり、時来たって鉄、金となる」という言葉がある。ひとたび運に見放されると、持っていた金も鉄の値打 […]
第35話 千手観音
昔、奈良の興福寺に実際に手が千本ある観音像があって、徳川時代、その珍しい観音様を江戸に運んでご開帳すると、大勢のお詣りがあったという。 参拝者の中に駄洒落をいう人があって、「なるほど、これは沢山手がありますなァ。千本あ […]
第36話 「供える」「食べる」
10歳で夭折した坊やの四十九日の法事があって、お斎の席に着いた時、床の間に安置された位牌と写真を見て、“坊や、私たちだけ頂戴して済まんなァ”という気になり、ジュースをコップに移してお供えした。するとしばらくして末席にい […]
第37話 水鏡の美人
インドの富豪の美しい嫁さんが姑とのトラブルに悲観し、自殺を決意して林の中に入ったが、いざという時に急にこわくなった。しかし家に戻るのも具合悪く、大樹に登った。 その樹の下に澄み切った美しい池があった。そこへ一人のお手伝 […]
第38話 ギャーテーギャーテー
『般若心経』は、心の捉われをなくする教えであります。捉われがある限り心の休まることはありません。捉われなきところに真の自由があらわれるのです。 良寛様は、地震に遭って見舞の手紙を貰った時、その返事に「災難に遭う時は災難 […]
第39話 ケチは丸損
山寺にケチな和尚がおり、桶に飴を入れ大事にしまっていて、時折一人でこっそり舐めていた。 そして一人しかいない小僧には、「これを食えば死ぬぞ」と言っていた。しかし小僧はそのウソを見抜いていた。 ある日和尚が外出した。小僧 […]
第40話 知と行(知識と実践)
ロバが道端の草を食べようとして、右側に足を運ぶと左の方がうまそうに見え、左の路肩の草を食べようとすると右の方がよさそうに思われ、右せんか左せんか、迷いに迷って食べることができず、ついに餓死してしまったというロバの物語が […]
第41話 知識と知恵
知識は「知識を得る」というように外から学び取るもの。、知恵は「知恵を磨く」とか「知恵を出し合う」というように、持って生まれた内なるものを磨くことによって外にあらわれ出るもの。 昔、道学者のところへ一人の青年が訪れ、処 […]
第43話 嫌いな相手に救われる
昔、西洋のある国の皇太子は、ハエとクモが大嫌いだった。 ある時、隣国との戦いに敗れて逃げ回っているうち、大樹の根元に腰を下ろした途端、どっと疲れが出て睡魔に襲われ、深い眠りに陥ってしまい、敵の近づいているのも知らなかっ […]
第44話 他を利する
満員のバスに、途中から一人の女性が大きな荷物を提げて乗ったが席がない。誰も立ってくれない。運転手はしきりにバックミラーを見ていたが、たまりかねたとみえて、「奥さん、席がなくてお困りですね。僕が立ちますから、ここへお掛け […]
第45話 縦横二つの人間関係
お盆の日には寺々で施食法要がよく行われる。お盆は父母先祖に対する孝順供養を教えるものであり、施食会は無縁の精霊まで供養する慈悲行の大切なことを教えるものである。 私たちは、父母先祖という縦の人間関係と社会連帯という横の […]
第47話 鈍の徳
辞書をみると、鈍とは切れ味の悪いこと、にぶい、のろい、とがっていないなどとあり、あまりいい意味には使われないが、実はこの鈍、社会生活には大事な要素がある。 クルマの運転でも、鋭角に曲がるには大変だが、鈍角は初心者でも失 […]
第48話 「こだわる」に一言
このごろ「こだわる」という言葉がよく使われる。 そしてそれは、たとえば「ビールは銘柄にこだわる」とか、「こだわりの逸品」などといったように、よい意味に使われている。 しかしこの言葉は本来、気にしなくてもいいようなことを […]
第49話 この紋所が眼に入らぬか
テレビ「大岡越前」を時折見ているが彼が伊勢の山田奉行所時代のエピソード。 ある、殺生禁断の場所に、夜、一人の少年が現れ、網を打って魚を捕っているという噂が流れた。捕り手が張り込んで咎めると、その少年、いきなり提灯を突 […]
第50話 明君のもと明臣あり
備前岡山の藩主、池田新太郎光政は徳川時代の明君として名高い。 この明君の家臣に津田左源太という小姓の若侍がいた。彼は宿直(とのい)といって、殿の寝室の隣で不寝番の役を勤めていた。 ある晩、気の弛みか疲れからか不覚にも […]