第61話 落ち葉焚き
いくら掃いても掃ききれない落ち葉の季節となった。
こんな時思いだすのが良寛さまのことである。
良寛さまが托鉢に出て不在の時、良寛さまを召しかかえようとした殿様の家来が来て、五合庵の周囲の草を刈り、良寛さまに喜んでもらえるだろうと思っていた。
ところが帰ってきて良寛さまは「これでは虫が鳴かなくなる」と嘆き、殿様の招きもすげなく断ったという。
焚くほどは 風がもてくる 落ち葉かな
この句はその時詠んだものといわれるが、良寛さまのこうした慈愛の心は美しい言葉となって表されている。
一つ松 人にありせば 笠貸しますと
ミノ着せましを 一つ松をわれ
雨に打たれる松の樹を見ては、お前が人間だったら笠を貸してやるものを、ミノ着せてやるものをと、やさしい言葉をかけている。
秋晴れの日の午後、五合庵の南側の縁側で日向ぼっこしていた良寛さま、ふところからシラミを取り出し、手のひらの上にのせ、「さア、お前たちも日向ぼっこしなさい」と、まるで人に語りかけるように言い、「この良寛は親があるでなし、子があるでなし、血を分けたのはお前たちだけじゃのう」と呟いたという。
もっともこの独り言は誰も聞いた人がいないので真偽のほどは保証の限りではないが、
「血を分けし、シラミいじらし、衣替え」
といって、シラミも一緒に衣替えさせたということを申し添えて判断にお任せしよう。